文芸ポップス

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【紹介:小説家】村田紗耶香

村田紗耶香

【略歴・紹介】

村田紗耶香(むらた・さやか)

1979年千葉県 生まれ

玉川大学文学部芸術文化学科卒

2003年「授乳」で第46回群像新人文学賞 小説部門・優秀作に選ばれる

2009年『ギンイロノウタ』で第31回、野間文芸新人賞受賞

2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞

2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞

(参考『ギンイロノウタ』新潮社2008.10『コンビニ人間』文芸春愁2016.7)

 

作品

 

・授乳

著者のデビュー作。家庭教師の大学院生と高校生の女の子の物語。傷つきやすくナイーブな青年が、少女の好奇心をくすぐります。青年はその茶目っ気にさえも母性を感じたのかもしれません。

 

 

・消滅世界

この本を読んだ時、僕は21歳でした。初めて恋人になってくれた人との別れや、2度目の恋愛に胸を躍らせてる中でこの本に出合いましたが、恋愛に胸躍らせてる人にはお勧めできない一冊です。結構強烈でした。男女がセックスして子供が生まれて大人になって世界を作るのだとするのが、聖書の世界だと考えると、確かにこの『消滅世界』の中では世界は消滅していますね。

 

・殺人出産

「10人産めば人を一人殺してもよい」、私たちの生きる現実とは異なった現実を生きる一人の女性を主人公とした小説。一般には、ディストピア小説と呼ばれていますが「人を殺したい」という欲望は誰もが抱います。その欲望を可視化した小説、即ち世界は違えど私たちと「彼女たち」はなに一つ変わらないのかもしれません。

 

 

 

・地球星人

この作品の中で気に入っている個所を引用します。

 

「智臣くん、おかえり。どうだった?」

「追われてる。すぐにどこかに隠れないと」

 震える夫から事情を聞くまえに、外から車の音がして、「ひっ」と夫が悲鳴をあげた。

(中略)

「どうしよう、由宇。智臣くんを『工場』の使者が追いかけてきた」

(中略)

「智臣! 出てこい、いるんだろう!」

 由宇は目を丸くした。

(中略)

「失礼ですが、息子はいますか?」

 舅はどんどん家の中に入ってきて、「智臣!」と叫びだした。

 やがて、台所から夫が引き摺り出された。

「馬鹿息子が!」

(『新潮』新潮社2018.5)

参考

・村田紗耶香さんの読書歴がインタビュー形式で語られています。芥川賞を受賞される前のインタビューになりますね。 

作家の読書道 第125回:村田沙耶香さん - 作家の読書道

 

・『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した後のインタビューです。村田さんの仕事観がうかがえて、楽しめました。

【新春・芥川賞作家インタビュー】「コンビニ人間」37歳村田沙耶香は今もコンビニで働いているのか コンビニで好きな仕事「○○」(1/5ページ) - 産経ニュース

村田紗耶香が好きな人におすすめ

太宰治ヴィヨンの妻

「地球星人」に、「ヴィヨンの妻」の冒頭をオマージュしたワンシーンがあります。比べてみても、面白いかもしれません。

 

 

おわりに

 

村田紗耶香さんの小説はとても面白いですよね。ぼくが初めて読んだのは「白色の街の、その骨の体温の」でしたが、村田さんにドハマりして遡って読んでいきました。

 

コンビニ人間』が芥川賞を受賞した際、この小説を「自己肯定」の話と読む人が多かったと聞きます。コンビニという、ぼくらにとって身近な空間で生きる「独身の女性」が、他者の目にぶれることなく生きている小説であると読んでいるかもしれません。が、彼女が現実を生きる上では「信頼できない語り」であるということをよく肝に銘じる必要があるかもしれません。ぼくには、「コンビニ人間」が一つの病のように思えるのです。

 

みなさんは、村田紗耶香さん、お好きですか?

どんなとこが好きなのか、いつか多くの人と話してみたいものですねえ~