文芸ポップス

文芸ポップス

文芸作品を楽しむブログです。

書評

【書評】山本直樹『BLUE』ー振り返ればそこにいるぼくら

山本直樹『BLUE』ー振り返ればそこにいるぼくら 俺はとなり町の郵便局員になった 飲み仲間もいるし かわいいカノジョもできた 田舎暮らしもそんなに悪いもんじゃないよ 山本直樹『BLUE』「BLUE」より(太田出版2006.8) 私が引用した版 Blue posted with ヨメ…

【書評】保坂和志『考える練習』

はじめに 最近、保坂和志の著書を勧められることが多い。というか、保坂ファンの友人を得た。彼から最初に勧められた本が『書きあぐねている人のための小説入門』という本だった。内容に関しては、割愛するが、以降私は「お話」を書くのではなく「一文」を繋…

【書評】池澤夏樹『スティル・ライフ』

あらすじ 染色工場で働く《僕》は同じ工場で働く佐々井と3ヵ月限定の株式投資を始める。《佐々井》の指令の下、《僕》は投資を進め、万事順調に資産は増え続ける。一定の資産を得た佐々井は荷物をまとめ《僕》の下から去っていく。《僕》の下には少なくない…

【書評】山岡ミヤ『光点』

あらすじ 家と工場を往復する日々を過ごす実以子は隣町で父の不倫の現場を目撃する。父が相手の女性に手を合わせて祈る仕草をするのを見た実以子は、それ以降神社に通い、神前に祈りを捧げるようになる。そこで出会ったカムトもまた、妹への謝罪を祈り、欺い…

【書評】マルグリット・デュラス『モデラート・カンタービレ』

あらすじ 鎔鉱所の社長夫人、アンヌ・デパレートは街で起きた情痴殺人事件をきっかけに、事件の現場でもあるカフェに通うようになる。そこで知り合った元・鎔鉱員のジョーヴァンと酒を飲みながら事件についての会話を交えていく内、アンヌは自身の意志を持っ…

【書評】鴻池留衣『ナイス・エイジ』収録「二人組み」

あらすじ 本間のクラス担任の島田は自身の自尊心を満たすべく、合唱コンクールの練習に燃えていた。合唱コンクールなど心底くだらないと、島田や偽善を振りまく他の教師を軽蔑する中学3年生の本間は、無口な女の子坂本ちゃんを歌の練習と称してカラオケに誘…

【書評】フローベール『ボヴァリー夫人』走り書き

ボヴァリー夫人、読み終えました 何年か前授業でボヴァリー夫人を読んだのですが、最近デビューした小説家の山岡ミヤ氏が「執筆中は『ボヴァリー夫人』を自身の励ましとして読んでいた」と語っていたのを受け、私も自身への励ましとして再読してみました。お…