文芸ポップス

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【音楽】英雄バズマザーズ

バズマザーズ

 

 バズマザーズと呼ばれるバンドを皆さんご存知だろうか。ギター、ベース、ドラムからなるスリーピースバンドだ。どのパートも非常にレベルが高い。活動当初は、フロントマンである山田亮一の前バンド、ハヌマーンと比較されるのではないかという不安もあったが、今では誰の文句も受け付けない位グッドな演奏を聴かせてくれる。2年前、鹿児島でもライブがあったのだけど、正直興奮しすぎて何も覚えてない。

 

そのバズマザーズが7月に新譜を出す。アルバムとしては6枚目だろうか。

先日、新作のMVが発表された。こちらである。バズマザーズにしては珍しく、有名作家、加藤マニの制作である。

 

バズマザーズ「敗北代理人


敗北代理人 / バズマザーズ

 

僭越ながら、歌詞を引用する。

 

宇宙遊泳の代替え案として、俺は山頂を目指している

それでも繰り返す一歩一歩が、尊厳めいた感情を成している

            バズマザーズ「敗北代理人」公式HPより引用 

 

「どなたでもお気軽にどうぞ。何かとお忙しいのでしょうし」 

その看板は唐突にそう始まって

「冥福を前借りにすがる前に、どうか私をお訪ねください。敗北、請け負います」

            バズマザーズ「敗北代理人」公式HPより引用 

 

 どうだろうか、この歌詞。バズマザーズの音楽は、サンダーボルト怒鳴りたい日本語のような山田亮一の十八番とでもいえる皮肉な歌詞を用いた曲も多い。けれど一方で、フールオンザビルやナイトクライヌードルベンダーのように、哀愁を誘う、聴く人間の肯定感を育んでくれるような、歌詞の曲も多い。「オレってクソだな」って感覚に、「オレもだよ、まっ、生きてこうぜ」と言った相槌を打ってくれるような曲だ。こういうこと言うのも何だが、カート・コバーンみたいだ。

 

今回の「敗北代理人」はまさに、後者の質を備えた曲だろう。聴くと泣けてくる。言葉はいらないのかもしれない、ただただ聞いて欲しい。

 

英雄として

 10年くらい前、山田亮一は、現代のホールデン・コールーフィールドだと思っていた。

 けど今は、現代のチャールズ・ブコウスキーだって気がしている。正直もう、自分は場末にいても埃がたくさん出てくる人間になっちゃったんだけど、バズマザーズの音楽を聴くと、今日は布団にもぐってもいいかなと、思うのだ。目を覚ますのも、悪くはないな、と。

 

しけた皮肉を必要としていた青春時代、共感してくれる友人の欲しい24歳、夏。

バズマザーズ山田亮一は青年たちのすぐ傍で、いつも歌っているのだ。

 

バズマザーズは英雄のようにしてただそこにいたのだった。

 

<完>

 

2018.7.4 発売予定の新作「敗北代理人」を収録

 

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